2020年度から始まる大学入学共通テストで、英語の民間試験活用は萩生田光一文部科学相の「身の丈」発言を受けて延期された。ただ、国語・数学に導入される記述式も課題山積だという。何がそんなに問題なのか。一連の改革に反対している「“入試改革”を考える予備校講師の会」の吉田弘幸・代表世話人(56)に聞いた。【大場伸也/統合デジタル取材センター】
1次試験の記述式は意味がない
--共通テストで記述式を導入することについて、どう考えますか。
◆国立大であれば個別(2次)試験があります。共通テストは基礎的な能力、高等学校で学んだことができるかを確認するのが目的です。多くの大学は個別試験で記述式や論述の問題を出しているわけですから、重ねて試す必要はありません。
さらに、数学の記述問題は解答過程を評価することに意義があるのに、試行調査をみると、ほとんど穴埋め問題でマークシートと変わらない。あえて記述式にする価値がない。国語もかなり解答の仕方を限定した穴埋めに近い形で、無理して記述式にする必要はまったくありません。
50万人分の採点は物理的に困難
--記述式の採点は、ベネッセホールディングスの子会社が61億6000万円で落札しました。
◆民間委託するしないにかかわらず、50万人以上が受ける記述式試験を、短期間に正確に採点するのはきわめて困難です。
大学入試ですから公平性・公正性がとても大事で、答案も採点者も1カ所に全部集める必要があります。あらかじめ解答例を準備していても、想定していない解答が出てきますから、採点者が一堂に会して合議をしながら採点基準も動いていく。そんな作業を50万超の答案と1万人単位の採点者に対して行うのは不可能です。場所の確保も物理的に難しいでしょう。
業者側がデータを送って各採点者が自宅のパソコンで採点するという話もありますが、模試や通信添削ならともかく、情報管理の厳格性が求められる大学入試として許されるはずがありません。
自己採点も厳しい
--学生アルバイトが採点する可能性もあるようです。
◆そもそも、受験生が志願する大学の教員以外の人による採点に公正性を期待するのは難しい。実際、採点する学生アルバイトより受験生の方が能力が高いということはあり得ます。採点者が知らない言葉を使ったり、数学で採点者が分からないような解き方をしたりしたときに正しく採点できるのか。採点者ごとのバラつきも大きくなり、公平性も期待できません。
--自己採点ができないとも指摘されています。
◆特に国語は評価方法が複雑なので難しい。国語が専門の大学教授ですら、自分の答案がどの評価にあてはまるのか判断するのは困難です。生徒は自分の評価が分からないまま、個別試験に出願しなければならず、被害は甚大だと思いますね。
問題漏えいの危険性も
--民間委託には他にどんな問題がありますか。
◆まず、問題漏えいの危険性です。これだけの規模の試験を短期間で採点するとなれば、あらかじめ採点基準を採点者に周知する必要があります。問題や解答例、採点基準が事前に採点者に通知された段階で、漏れる可能性は大いにあります。
受験生の答案も含めた膨大な情報が1社に集まるわけで、情報漏えいの危険性も高まります。過去には、ベネッセが通信添削の受講生情報を漏えいする事件も実際にありました。
採点ミスや出題ミスがあった場合の責任も不明確です。業者なのか、文科省なのか、大学入試センターなのか。採点ミスや不公平な採点があったときに、情報開示がちゃんとされるのかも分からない。文科省は民間側の情報をしっかりと把握できておらず、英語民間試験のように、直前になって結局「できない」となって大きな混乱をきたすのではないかと懸念しています。
利益相反の恐れも
◆さらに、収集した情報の目的外利用や、利益相反的な行為の懸念もあります。採点にかかわる会社が、教材や模試で利益を上げるのは、常…
2019-11-20 12:07:00Z
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