乗客が新型コロナウイルスに感染したことを受けて、3日から日本政府の検疫下にあるクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」を運営する、米国の船会社「プリンセス・クルーズ」は10日午前10時に文書を発表し、全乗客に旅行にかかった費用を全額返金すると発表した。乗客には前日9日夜にジャン・シュワルツ社長名の文書を配り、通知していた。

返金されるのは、クルーズ代金、航空券、新幹線、タクシー代金、クルーズ前後のホテル宿泊、寄港地観光ツアー、船内サービス、その他の租税、手数料、港湾費用に加え、下船予定日だった4日以降の船上で発生した費用も全て無償となる。さらに、21年2月28日まで予約したクルーズや、全額支払っていない既存の予約にも使える、今回のクルーズ代金と同額のフューチャー・クルーズ・クレジットも乗客に渡す“倍返し”の対応となる。

埼玉県から参加中の60代男性は、日刊スポーツの取材に「返金される可能性は、50%くらいの確率で予想はしていましたが、同額クレジットの“倍返し”までは、予想していなかった」と驚いた。男性によると、ツアーで食事をともにした他の乗客から、過去の別のツアーで天候不良で港に入港できなかった際、プリンセス・クルーズから返金されたことがあると聞いていたという。男性は「素晴らしい対応」と喜んだ。

プリンセス・クルーズの日本オフィスの、カーニバル・ジャパンの担当者は、「過去、旅程が組めない時に返金した実績はございます」と説明。その上で「今回は特例ではあるので、お客さまが個人で使われたものも返金させていただきます」と“倍返し”を含む今回の対応が、特別であることを強調した。

一方で、今回は天候の悪化などで旅程が組めなかったケースとは違い、香港人の男性乗客(80)の感染が1日、下船した香港で発覚したことを受けて、3日から日本政府の検疫下に入っている状況だ。日本政府に損害賠償を請求する可能性について、担当者は「現在は、お客さまへの対応が最優先で、賠償うんぬんまでは考えていません」と答えた。

また乗客に配った文書には、下船後の乗客が自宅に帰るための手配を検討しているとした上で「日本政府と話し合いを進め、情報がまとまり次第、皆様にお知らせします」とした。担当者は「米国の本社が、日本政府と調整中です」と説明した。【村上幸将】