中国ブランドのボシデンは、2月のロンドンコレクションで自国にエールを送った。Photo: Courtesy of BOSIDENG
新型コロナウイルスの影響により3月下旬に、6月のパリ・ミラノメンズコレクションと7月のオートクチュールの中止が発表された。そのため、発表時期が9月にずれ込み、多くのブランドはレディースとの合同ショーを開催することが予想される。合同ショーができないオートクチュールコレクションは未だにリスケジュールされていない。4月から5月にかけてはリゾートコレクションの発表時期でもあるが、多くのブランドは現在、自粛生活が強いられている。そのため、ショーの中止はもちろんのこと、ルックブックの撮影や生産、流通など、すべてが中断されている状態だ。
9月にウィメンズとメンズが両方とも開催されるとなれば、いつもとは異なるコレクションシーズンになるだろう。同時開催は、大手ブランドから若手にいたるまで、あらゆる層のファッション企業へ影響する。4都市をまたぎ、1ヶ月に渡って開催されるウィメンズの春夏コレクションだが、そこに約2週間のメンズショーを盛り込むとなると、かなり柔軟なスケジュールの調整が必要となる。現在、多くの工場が封鎖され、サプライチェーンが途切れてしまっている。そんな中、次のシーズンの準備はすでに始まっているようだ。
2月のパリコレクション中に「ル・ラボ」のパーティーに訪れたリック・オウエンス。Photo: Getty Images
ファッション業界に大きく罵りかかるこの「9月問題」について、デザイナーたちに問いかけてみた。通常はメンズとウィメンズを別々に発表しているリック・オウエンス(RICK OWENS)は、「今の時期に話しすぎるのはすごく嫌だけれど」と前置きを踏まえて語ってくれた。「男女のショーを別々にする方が、それぞれの顧客に対して強いメッセージを届けられると感じている。しかし、生産サイクルを元に戻すために今シーズンは喜んで合同開催したいと思っている。幸いなことに、小さな会社なので臨機応変に対応できるからね」
近年、多くのデザイナーが男女合同ショーを開催しているが、メンズのショーでひとつのテーマを探求し、数週間後のウィメンズショーで同じテーマを別視点で展開するリックにとっては、別々に開催する方が合理的だ。クリエイティブなアイディアを独特なアプローチで表現する彼にとって、この合同ショーは根本的なチャレンジになるかもしれない。
一方、ヴァレンティノ(VALENTINO)のクリエイティブ・ディレクターを務めるピエールパオロ・ピッチョーリは「いつものフローが崩れてしまった」と語る。ローマ郊外のネットゥーノで自宅隔離中の彼は、すべてのプロセスに遅れが生じていることを明かした。「僕の仕事は常にバランスが取れている。新しいコレクションをどう発表するかも、その次のプロジェクトもすでに立ち上がっていた。しかし、この予測不可能な状況が、コレクション制作からサプライチェーンに至るまで、すべてを遅らせている」。彼はメンズ&ウィメンズのプレタポルテコレクションとオートクチュールをパリで毎シーズン発表する数少ないデザイナーのひとり。収益が10億円を超えるヴァレンティノ(VALENTINO)にとって、9月はとても重要な時だ。
「クチュールとプレタポルテを一緒に発表することはないよ。7月のクチュールコレクションは、まったく別の発表の仕方を思案中なんだ。また、先月のようにウィメンズとメンズの合同ショーも続けたいと思う」と、先月発表された2020-2021年秋冬コレクションについて触れた。「男女平等というマニフェストではなく、日常生活の一部として世界を見渡しているので、このジェンダーレスなアイディアは自然に浮かんできたから」
これは、メゾン マルジェラ(MAISON MARGIELA)がすでに実践しているアプローチだ。彼らはジェンダーレスなコレクションを発表し、男女を特定しないアイテムを店頭で販売する。このような意向になることをヴァレンティノ(VALENTINO)は正式には発表していない。しかし、このビジネスモデルが多くのブランドに導入されれば、今までのコレクションスケジュールが刷新する。今のスケジュールによると、バイヤーたちはメンズだけで1年に4回もヨーロッパを訪れなければならない──5月と11月のプレコレクションと1月と6月に行われるメンズファッションウィークだ。その上にレディースのコレクションシーズンがある。
商品が各店舗に納品されるのは、コレクション発表の約5ヶ月後だ。一部のメンズのデザイナーは、9月に発表できることを願っているが、まだ先は不明。思わぬリセットボタンが押されたファッションのサイクルだが、これを機に業界全体の課題が明白になった。
ミラノを活動の拠点とするニール バレットは、次回のメンズコレクションにてウィメンズも発表する予定だ。 Photo: Getty Images
「そんなに頻繁に開催する必要はあるのだろうか?」と指摘するのは、ミラノの自宅で隔離生活を送っているニール バレット(NEIL BARRET)。彼は9月の難題をクリアにできれば、今後のスケジュールも大幅な短縮が可能だという。「メンズのプレタポルテとプレコレクションでワンシーズンを確保できれば十分。ウィメンズも同様に2回のタイミングに分けられる。そうすれば、バイヤーはメンズを見るために年4回もヨーロッパに訪れなくてもよくなる」。ニールは、自身のビジネスの大半を占めるメンズのショーでレディースウェアも発表する予定だ。
「このように変えれば、プレコレクションの制作に早く取りかかれるのと、メンズにも十分な時間が確保できる。また、納品もスムーズになると思うよ」と提案。このパンデミック後、すべてのメンズウェアは1月と6月に、すべてのウィメンズが、7月と2月〜3月になるかもしれない。プレとメインの境目はなくなるが、店頭では別々で販売すればいいと彼は言う。「誰もが変革を求めている。そして今がチャンスだ。このようなスケジュールの変更があると、ファッション産業を頼るトラベル業界が打撃を受けるかもしれないけれど」
ロイヤルファミリーとして最後の公務に出席したメーガン妃は、エミリア・ウィックステッドのドレスを着用した。 Photo: Getty Images
ファッション業界に迫るこの「9月問題」は、未来のコレクションの在り方に踏み出す第一歩であり、いわばリハーサルみたいなものでないだろうか。だが、懸念点は、大規模な合同コレクションシーズンは中規模のブランドを脅かすことだ。その中でもインディペンデントブランドはすでに、新型コロナウイルス危機により脆弱になっている。「広告予算やマーケティング予算をあまり割いていなく、一番大きいキャンペーンとしてのショーに注力を注いでいる」と言うのは、2008年に立ち上げて以来、メーガン妃を含む数多くのファンを生み出してきたエミリア・ウィックステッド(EMILIA WICKSTEAD)だ。9月のスケジュールを再考するうえで、彼女のような中規模ブランドにスポットライトを当てることはとても重要だ。
また、ハルパーン(HALPERN)を3年前に立ち上げたマイケル・ハルパーンは、「若手ブランドにとって最も重要なのは顧客と業界の関心を刺激する個性的なコレクションだ」とショーの重要性を述べた。マイケルとエミリアはともに、ロンドンファッションウィークに参加する。今年の9月、1ヶ月にわたる4都市のコレクションに加わったメンズとオートクチュール発表のため、ロンドンコレクションの常連デザイナーたちは妥協を強いられるかもしれない。
ショーの参加者を減らすことなく進行するために、ほかのブランドと会場を共用し、連続して発表することをどう思うか、マイケルとエミリアに尋ねた。「スペース、照明、座席を再利用または共有できる会場を見つけることで節約を可能にするのはとても重要で、今後もショーを続けるならばそういった処置も必要。他ブランドと同じ会場でも自分のブランドの世界観を表現できると強く信じている」とエミリアは言う。マイケルもこれに同意した。「ブランド同士の交流、真のコミュニティ感覚、歪んではいるが希望に満ちた現実の反映、そして盛大なスペクタルをお届けすることはとても刺激的だと思う」
さまざまな規模のブランドによるテトリスゲームとなる9月のコレクションスケジュールは、新たなファッションビジネスの形を提示するものになるだろう。中小ビジネスにとってこれは大きな決断であり、消費者がその製品を次のシーズンにも購入できるよう十分に配慮することも大切になってくる。
自社工場でマスクを作り始めたジョルジオ・アルマーニ。 Photo: Instagram/@giorgioamarni/Giorgio Amarni
「わたしたちは完全に休業できるほど小規模ではなく、このような恐ろしい状況が終わり次第、元に戻るまで続けられる資金がある大企業でもない」とマイケルは言う。「政府が措置をすぐに実行しないなら、とたんに脆弱になってしまう。これを乗り切れるかは、今までと同じように人々がわたしたちを支え続けてくれるかどうかにかかっている。スタジオ内の素晴らしいチームだけでなく、イギリスとイタリアの工場で働く多くの人々、生産施設など、大きな影響を受けるこの業界のあらゆる面が、劇的な転換期を迎えるだろう。さまざまな規模のファッション企業が力を合わせて、業界をサポートし立て直すプランを考える必要がある」と続けた。
新型コロナウイルスの感染拡大で9月のショーが中止になれば、インディペンデントブランドはますます窮地に立たされる。ウィメンズ&メンズの合同開催が正式に発表され、プレコレクションが縮小されたり、あるいは従来の形式からの革新的な対応策となったりしても、いずれにせよファッションサイクルが変わることは明確だ。マイケルは最後に今の状況を映画『オズの魔法使い』(1939)に例えた。「ファッション業界は赤い靴を必死につかむドロシーで、この竜巻は私たちをどこに運ぶかはまったく分からない。そんな不透明な中で持ちこたえるには、業界内外がサポートし、一丸となることだ」
Text: Anders Christian Madsen
From VOGUE.CO.UK
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