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VRフィルム『HERA』×ファッション〜現実とVRの境界 | 特集 - CGWORLD.jp

日常生活でも作品制作でも、多かれ少なかれ影響のある「ファッション」。そこで現在制作中のVRフィルム『HERA』におけるファッション表現に注目し、先日正式に発表された『HERA』プロジェクトと、映像制作における様々な挑戦について紹介する。

※本記事は月刊「CGWORLD + digital video」vol. 260(2020年4月号)からの転載となります。

TEXT_草皆健太郎(BOW)
EDIT_斉藤美絵 / Mie Saito(CGWORLD)、山田桃子 / Momoko Yamada(CGWORLD)
PHOTO_島田健次 / Kenji Shimada

VRフィルム『HERA』
原作・監督:東 弘明/脚本:伊藤靖朗、東 弘明/音楽:高橋英明/CAST:名塚佳織、小清水亜美/プロデューサー:藤岡寛子、待場勝利/アートSV:澤井富士彦(WACHAJACK)/CG Director:高金幸司(khaki)、大山俊輔(RUNPU)/Main Programmer:片渕孝一(RUNPU)/Digital Artist:中澤正浩、柳島秀行(CyberHuman Productions)/3D Facial scanning:CyberHuman Productions/STYLIST:渡辺康裕/製作:WOWOW×stoicsense

現在の延長線である近未来を描く挑戦的なVR作品

今回は「CG×ファッション」特集ということで、ファッションに注力したCG作品に触れたい。が、まずは当該作品『HERA』について紹介させていただく。

左から、東 弘明監督(stoicsense)、高金幸司CGディレクター(khaki)、中澤正浩デジタルアーティスト、柳島秀行デジタルアーティスト(CyberHuman Productions)
stoicsense.co.jp khaki.tokyo
www.cyberhuman-productions.co.jp

左から、米倉 央デジタルアーティスト、大山俊輔CGディレクター、片渕孝一メインプログラマー、中原一徳氏デジタルアーティスト。以上、RUNPU
runpu.co.jp

『HERA』は人生の追体験ができる、現在開発中のVRコンテンツだ。昨今リアルタイムCGはゲームを中心に、VR技術もハード・ソフト共にすごい勢いで進化している。別方向では、あたかも実在しているかのようなデジタルヒューマンという技術も活気づいている。どちらも過去には実現が難しい憧れの技術だったものであり、両技術を同時に用いたコンテンツが生まれるのはまだ先か......と思っていたのだが、そこにあえて正面から挑戦しているのが、この『HERA』という作品である。すなわち、VR空間で架空の人物たちとインタラクティブなコミュニケーションをとることで、自身とまったく別の世界と物語を体験できる先鋭的なプロジェクトだ。

xR技術に関しては、世界中で研究開発が行われており、様々なコンテンツが生み出されつつあるが、「現実との境界を感じさせない仮想空間」はまだSF作品などで語られる夢物語で、現実世界では実装されていない。『HERA』はかなりハードルの高いプロジェクトなのである。東 弘明監督は、常々「マルチエンディングVRフィルムをつくりたい」と考えていたそうで、各所で登壇した際に構想を話していたところ、同じビジョンをもつWOWOWと接点をもつことになり、WOW Laboとしての活動の一環として、共同制作で本企画がスタートしたそうだ。「今回のプロジェクトには3つの取り組み課題があります」と東監督は話す。それは①ストーリー分岐型のVRフィルムの実現、②AI×xRのビジョンの提示、③デジタルヒューマン&デジタルアクターの作成、である。この3つの課題を満たすべく制作が行われ、背景に関してはまだプリビズ状態だが、先行してデジタルアクターの制作が進められている。制作チームは東監督を中心に『攻殻機動隊 新劇場版 Virtual Reality Diver』のチームが再集結した。直近では3月に開催される今年のSXSW Conference & Festivalsで展示される予定とのこと。

ネタバレになるので詳細はあまり触れないでおくが、概要を紹介すると、主人公の男性・NEALが現実の女性であるLUNAとAIシステムであるHERAとの間で心が揺れ動く近未来の物語で、最終的にアイトラッキングを利用し、プレイヤーの見ている視点によって自然とストーリーが分岐していく構造になっている。「VRフィルムには将来AIが入ってくるという予想があります。キャラクターと対話をしながら、それぞれのエンディングを迎える作品が生まれてくると思うんです。そんな未来を見据えて、今その何段階か前のプロトタイプをつくっているところですね」と東監督。

最終的な実装はUnreal Engine(以下、UE)で行われ、リアリティを追求するべく想定しうることを可能な限り詰め込んで制作しているという。例えば衣服のシミュレーションや髪の毛の動きのリアリティだ。動きはモーションキャプチャを用いるが、本作の特性上、デジタルアクターが常にプレイヤー(主人公)に近接して行動・存在するため、デジタルアクターの制作は重要である。登場するデジタルアクターは実在の人物をオーディションで決め、CyberHuman Productions(以下、CHP)でフォトグラメトリーを行い、それを基に制作していく。最近増えてきた手順ではあるが、本作ではそれをVRの中で「存在」させなければならない。そのため、単に3Dモデルを作成するというわけではなく、服装・アクセサリ・メイク・髪型など、全ての面で実在感が求められた。作品の世界観が「40年後、軌道エレベータが建設された東京湾沿岸の特区」という設定であるため、プロのスタイリストが現在のファッション情勢を考慮しつつ40年後のファッションを想定し、それを基に今あるハイブランドから衣服を選び、実際にアクターが着用し、衣服に合わせたメイクやヘアスタイルを決め、それをリファレンスとしているという徹底ぶりである。

ゲームなどの作品であれば、2Dでキャラクターをデザインし、衣服もそれに合わせて描いていく。もちろんデザイナーの知識や考えがキャラクターに生命を与えていくのだが、今回はそこを想像に任せるのではなく「その道のプロ」が未来を読み解いて選んでいるところがポイントだ。そういったある種の「考証」を行うことでリアリティが増していく。スタイリストの渡辺康裕氏いわく「現在はファッションが出尽くしていて、過去をオマージュしてリミックスする時代です。40年後もそう変わらず、むしろ人の手が生む美しさにもっと惹かれていくのではないでしょうか。ファッションは良くも悪くも飽きるので、だからこそちがうものが欲しくなるのです。美しいもの、かわいいものに対する欲求がファッションだと僕は思います」とのこと。本作では、そんなファッションの楽しさを表現した衣服になっているそうだ。そうした様々な検証を経てひとつひとつ積み上げられたファッションで あるがゆえに、実制作は苛烈を極めている。

背景に関しては「今建築の主流はザハ・ハディド系の流線的な造形なので、その延長線上にあるデザインを考えています。ザハ系の街を東京で再開発したらどうなるかをWACHAJACKの澤井富士彦氏と話し合いながら決めていきました」と東監督。また作品の世界観は近未来で、量子力学的平行宇宙が存在し、仮想空間もある設定のため、デザイン的にも挑戦となりそうだ。完成が楽しみである。

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April 02, 2020 at 12:19PM
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