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ファッションで地球を再生する。リジェネラティブ農業から生まれたドレス | 世界のソーシャルグッドなアイデアマガジン - IDEAS FOR GOOD

気候危機をはじめとした環境問題を語る際、具体的な内容は「減らす」「やめる」といった部分に焦点が当てられることが多い。「持続可能性」と訳されるように、サステナビリティのコンセプトにおいては、現状をこれ以上悪くしない取り組みが注目されやすい。しかし、果たして私たちが目指すべきところは現状維持なのだろうか?地球の気温は上昇の一途をたどり、土地も水も汚染され続けている。私たちが未来に残すものを、今よりよくすることはできないのだろうか?

そんな疑問に対する一つの答えとして、ロサンゼルス発のウィメンズブランド、Christy Dawn(クリスティーン・ドーン)が、今年9月に環境再生型農法で栽培されたオーガニックコットンを使ったドレスを発売すると発表し、注目を集めている。

環境再生 (regeneration) とは?

サステナビリティを超え、その先を見た概念として、環境再生 (regeneration) という言葉がアメリカやヨーロッパではよく聞こえるようになってきた。サーキュラーエコノミー(循環型経済)においても軸の一つとなっている考え方である。この世界を率いる存在であるエレン・マッカーサー財団も、「サーキュラーエコノミーの3原則」の1つに環境再生を位置付けている。

サーキュラーエコノミーの3原則

    1. 自然のシステムを再生(Regenerate natural systems)

有限な資源ストックを制御し、再生可能な資源フローの中で収支を合わせることにより、自然資本を保存・増加させる。

    1. 製品と原料材を捨てずに使い続ける(Keep products and materials in use)

技術面、生物面の両方において製品や部品、素材を常に最大限に利用可能な範囲で循環させることで資源からの生産を最適化する。

    1. ゴミ・汚染を出さない設計(Design out waste and pollution)

負の外部性を明らかにし、排除する設計にすることによってシステムの効率性を高める。

環境再生型農業 (regenerative agriculture) とは

環境再生を考える上で、重要になってくるのは農業である。Regeneration Internationalによると、地球温暖化の主要な原因として削減が叫ばれている炭素は、実は土にとっては栄養となる。植物は光合成を通じて炭素を取り入れている。自然の中で起きていることを模倣する環境再生型農業のサイクルの中では、炭素の循環を大気から隔離させ、保水力を持つ健康な土壌を保ち、生物多様性を豊かにし、丈夫な作物を作り、密な栄養素を蓄えることができる。

気候危機に取り組むにあたり、温室効果ガスを減らす努力は当然続けていくべきである。これをやめていいわけではないし、むしろ積極的に進めていく必要はある。

それに加えて、環境再生型農業の循環のもと土壌の中で炭素を活用することにより、気候危機を遅らせるだけでなく、逆転させる可能性も大いにあると考えられている。

環境再生型農業を取り入れたファッション

「農業」と聞くと、食用の作物が一番に頭に浮かぶと思うが、環境再生型農業は、実はファッションの世界でも動き始めている。

例えばパタゴニアは、2018年にリジェネレイティブ・オーガニック・サーティフィケーション認定を受け、すでに環境再生型有機農法で作られたコットンのTシャツなどの商品化を進めている。

そしてこの動きが、アスレチックウェアやアウトドアウェアといった比較的シンプルで機能性が重視される衣料だけでなく、ファッションとしてスタイルを楽しむブランドにも広がりを見せているのだ。冒頭でもお伝えした、ロサンゼルス発のウィメンズブランドChristy Dawnが今年9月に発表したのが、この環境再生型農法で栽培されたオーガニックコットンを使ったドレスである。

Christy Dawnはかねてから環境負荷の少ないファッションを提案してきたブランドだ。デッドストック生地を活用し業界内の無駄を減らすことに努めたり 、アメリカ大手再販サイトのthredUPと提供し顧客が不要になった服のサイクルを作りやすい取り組みに注力したりしてきた。

しかし、これまでChristy Dawn は、「減らす」ことへのフォーカスばかりでは足りないと感じていた。そして「私たちにもっとできること」を考えた結果、環境再生型農業にたどり着いたのだ。

彼らはこの新しいプロジェクトを ”Farm to Closet”(農場からクローゼットへ)と呼んでおり、そのサプライチェーンのスタート地点は土壌であると考えている。南インドを拠点にするファッションブランドOshadiと協力し合いながら、その土地、取り巻く自然環境や生物多様性、働く人々、そして地域コミュニティに優しいコットンを育てている。

夏の終わりにローンチする予定のドレスコレクションは、素材である綿だでなく、染料も現地の自然からセレクトしている。ドレス丸ごと、そのまま自然に還元できることを消費者に約束してくれている。

まとめ

環境再生のコンセプトがファッション業界に織り込まれ始めているのは、非常にワクワクする動きだ。Christy Dawnの、素材は地球の恵みになる方法で栽培され、利用を楽しんだ後、地球の栄養として土に返すことができるワードローブ。9月の発売が楽しみである。「今より地球環境を悪くしない」という考え方から前進し、「地球をどんどん元気にしていく」ファッションが、今後もっと可能になっていく希望を感じる。

【関連記事】アウトドア用品ブランドのパタゴニアが、ビールをつくり始めた理由
【参照サイト】Farm-to-Table Initiative (Christy Dawn)
【参照サイト】Regenerative Agriculture Can Change the Fashion Industry—And the World. But What Is It? (Vogue US)
【参照サイト】What is Regenerative Agriculture? (Regeneration International)
【参照サイト】リジェネラティブ・オーガニック認証発表(パタゴニア)

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July 22, 2020 at 10:07AM
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