コロナ禍の中、石川の繊維メーカーが厳しい経営を強いられている。ファッション向けの織物は、商品を市場投入する１年ほど前に受注するが、今年は販売不振で店舗が在庫を抱えており、新規受注が大幅に減少している。経営者からは「仕事がしたくても織る物がない」との声が聞かれる。当面はこの状況が続くとみて、需要があるマスクや医療用製品などの生産を強化する企業もある。
「暖冬と新型コロナでアパレル業界は冬物や春物の在庫が膨らんでいる。来年も厳しいのは間違いない」。中木戸織物（小松市）の中木戸一之社長は、業界の現状と先行きをこのように語る。
同社はファッションや企業ユニホーム、カーテンなどの織物を手掛ける。特にファッション向けの受注が落ち込んでおり、８月の売り上げは前年同期比６割減となった。工場では、織機の稼働率を落として対応しているという。
繊維産業の製造工程は川の流れに例え、川上（糸製造、紡績）、川中（織物、染色）、川下（縫製、製品流通）に分類される。
ファッション向けの織物は、衣料メーカーから１年ほど前に受注し、次のシーズンに向けて生産するのが一般的だ。ただ、今年は暖冬による冬物の不振に加え、新型コロナで百貨店や店舗が休業を余儀なくされ、春物の在庫も抱える。流通や小売りを担う「川下」の不振のしわ寄せが「川中」に及んでいる。
スポーツウエア向け生地などの染色加工を手掛けるテックワン（能美市）では、足元の受注が前年同期比３割減となっている。同社は週１日程度の休業日を設けて生産調整を行っており、北市幸男社長は「先行きが見通せない。すぐに戻ることはないだろう」と述べた。
そのような状況の中、マスクや医療用防護服などファッション以外の事業を強化するメーカーが出ている。
カジグループ（金沢市）の梶政隆社長は「マスクの需要はまだ高い。取引のある会社に織りや縫製の仕事を回すことができる」と語る。同社は２種類のマスクを開発しており、さらに販路拡大を進める。
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September 08, 2020 at 10:55PM
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