「声のブログ」とも言われる「Voicy」。著名人やインフルエンサーなど魅力的なパーソナリティのチャンネルや、毎日のニュース情報、企業のオリジナルチャンネルなど300以上のチャンネルを無料で楽しめる音声メディアサービスだ。その「Voicy」が、「JBB(日本視覚障がい者美容協会)」とコラボし、「音で読めるファッション雑誌」を立ち上げたという。その詳細を、「Voicy」の眞嶋伸明さんと、「JBB」の佐藤優子さんに聞いた。
「音で読めるファッション雑誌」を始めたきっかけ
ーー声のブログということですが、どんなチャンネルがあるのでしょうか?
眞嶋伸明さん(以下、眞嶋):チャンネルは経済ニュースやビジネスのハウツーから子育てまで300近くあります。リスナーの年齢層は20〜30代を中心に、40代も増えてきています。ビジネス好きの男性がメインだった当初に比べ、現在は男女比は6:4です。料理や育児をしながら聴くお母さんのリスナーも多いです。
ーー動画やウェブメディアとの違い、特徴を教えてください。
眞嶋:違いは2つあります。動画やウェブメディアは「見る」必要がありますが、音声メディアは「聞く」必要があります。もう一つは、動画やウェブメディアは、「手」で主に作りますが、音声メディアは、「声」で作ります。ユーザーが、目が忙しいとき(仕事などで手を使う必要があるとき、目を使う必要があるとき)に耳を活用して情報を取得することができる点は、音声メディアを使う大きなメリットです。動画でも音声を聞くことができますが、動画は見せることに重きを置いているので、聴かせることに重きを置いている音声メディアとは、「聞く」体験が全く異なります。
ーーそんな「聞く」体験を提供する「Voicy」が、「音で読めるファッション雑誌」を始めたきっかけを教えてください。
佐藤優子さん(以下、佐藤):「JBB(日本視覚障がい者美容協会)」は、視覚障がい者の方々が自分で確認する事が難しい「見た目」をサポートして美容の分野でいつ見えなくなっても怖くない世界を目指しております。そんな中、「Voicy」さんの「音声で日常生活に新しい可能性を見出す」というコンセプト知り感銘を受け、即連絡致しました。
眞嶋:佐藤さんから連絡を受け、素直に嬉しかったですね。私たち「Voicy」の世界観に共感してくれる人がいること自体も嬉しいですし、私自身がやりたかった「社会的に意義のある取り組み」を実現できるかもしれない、という点でもワクワクしていました。
ーー「ファッション雑誌を音で」という発想はどこからきたのでしょうか?
佐藤:視覚障がい者の方々は、服やメイクやネイル、髪型なども自分に似合うかどうかはもちろん、シーンに適切であるかを判断する事が難しいので、他の人の目を借りて選ぶことになるのですが、選ぶ方のセンスや信頼関係が重要となります。
もしファッション雑誌を音声で届ける事ができたら、お手本となる最新コーディネート、そのブランド名や値段を知る事ができればお買い物も自分で選べて楽しく便利になると考えました。
視覚障がい者の方々は、本(ファッション雑誌以外)を読みたい時に音読ボランティアを予約して頼む方もいるのですが、「Voicy」で配信することにより、時間に縛られず自由に聴けることを実現できると考えました。
ーー「Voicy」のリスナーに、「視覚障がい者」という想定はあったのでしょうか?
眞嶋:創業当初から、アイディアレベルでは視覚障害者の方向けのコンテンツも考えていたようです。ただ、具体的な取り組みには至っていませんでした。今回JBBさんからお声掛けいただいた時は、これは絶対に「Voicy」で実現させなければ、と思いましたね。
「割烹着のような袖」「アスパラのベーコン巻きのようなスカーフ」ファッションを音だけで伝えるということ
ーーひとつのコンテンツができるまでの流れを教えてください。
佐藤:健常者であればコンビニや本屋に入った瞬間、最新号が出ていることに気が付き、表紙の情報で中見を想像できますが、視覚障がい者の方々は最新号の存在に気付けないので、選ぶ雑誌は最新号にこだわります。
録音はスマホ一つで簡単にできます。まず雑誌の表紙を読み上げ、表紙のモデルになっている女優やタレントさんについて解説する事により、その雑誌のおおよその年代やイメージが湧くそうです。
そしてその雑誌の一押しコーナーのコーディネートをいくつか紹介して、コスメやインテリアに至るまで、主観を交えながら紹介していきます。
ーー主観を交える、というところがポイントなんですね。
佐藤:はい、視覚障がい者の方々は障害の程度も様々で、特に生まれつき見えない方は色を見たことがありません。そういう方を基準に、どうしたら伝わりやすいか常に考えているのですが、色の濃さやデザインなどは、「これは職場に向いている」など、シーンに合うかどうかをナレーターの主観を交えながら説明していきます。
例えば、表紙のモデルさんがふわふわの変わった形のワンピースを着ていて、それを「天上人のよう」と表現した時に、わかりやすかったという反響がありました。
ーー「どうしてもここは声では表現しにくい」という部分はありますか?
佐藤:最近、複雑な形の服が多く、それを見たことがない方たちにイメージが湧くよう表現するのが難しいですね。
具体例を申し上げますと、袖がバルーンのように膨らんでいて袖の先にゴムが入っているデザインのワンピースは「割烹着のような袖」と表現したり、取手にスカーフが巻きつけてあるデザインのバッグがあったのですが「アスパラのベーコン巻きのようにスカーフがくるくると巻きつけてあります」と、できる限り視覚障がい者の方が日常生活で触れたことがある、一般的なイメージ出来そうな物にたとえて表現するように心がけております。
ーー逆に、「このページは声でも伝えやすい」というところがありましたら教えてください。
佐藤:モデルさんが着用しているページはコーディネートの全体像が浮かびやすく、伝えやすいですね。また、コスメを読み上げる時もモデルさんが使用していると、メイクの雰囲気が伝えやすいです。
「今までは雑誌の部分は捨てていた。でも・・・」
ーーリスナーにはどんな方が多いのでしょうか? また、反響などありましたら教えてください。
佐藤:特に若い大学生などの視覚障がい者の方に楽しんで頂けているようです。
「音で読めるファッション雑誌の存在を知り思わず叫びました!」「服の細かい柄やイメージ、メイクの細かい部分を把握するのが難しかったので配信が楽しみ!」などのコメントを頂きこちらが嬉しくなりました。
ーー今まで人気のあった企画を教えてください。
佐藤:雑誌の購入で皆さんが一番楽しみにしているのが、豪華付録です。今まではJBBのメルマガで付録情報を配信すると、「付録のために雑誌を買っても、雑誌の部分が読めないので捨ててしまった」などの悲しい声を聞きましたが、「Voicy」で誌面の内容も配信できるようになり、喜びの声を多数聞きます。
ですので、配信する雑誌の選定も、付録とは思えない豪華付録が付いているものを選びます。視覚障がい者の方々は書店に行っても豪華付録に気付くことが難しいので、「配信をきっかけに購入できた」という声も聞きます。
ーー意外な反響や、想定外のリスナーがいたなど、面白い気付きがありましたら教えてください。
佐藤:視覚障がい者の方々には生まれつき見えない方や途中から見えなくなった方など障害の程度はさまざまなのですが、色や雑誌を見たことがない先天的な視覚障がいをお持ちの方も多く聞いてくださっていることに驚きました。
ーー今後の課題、目指す未来などがありましたら教えてください。
佐藤:出版社の方の雑誌を作る思いなど、生の声を聞きたいと言う声も多く聞くので、今後編集部とのコラボの回も設けられたら嬉しいです。
視覚障がい者の方々が色やデザインの説明で同じサービスを受けられるよう、ネイルサロンや美容室、デパートに至るまで視覚障がい者の対応の仕方を共有して、全ての女性がオシャレできる世界を目指します。
眞嶋:音声でどこまでできるのか、可能性は無限にあります。中でもいま私たちがやるべきは、スタートしたばかりのこのチャンネルを少しでも多くのリスナーに届けることです。そのために、JBBさんとの取り組みをご紹介いただけるメディアを増やすことも大切だと考えています。「Voicy」はメディアの会社だと思われることも多いのですが、音声のインフラを担うテックカンパニーを目指しています。音声とテクノロジーの力で社会に新しい価値を作りだす立場として、企業やサービスと組みながら、視覚障がいの方も安心してファッションを楽しめるような、優しい社会を実現していきたいです。
ーーありがとうございました!
「ファッション誌を声で表現する」という、一見、斬新なアイディアには、放送を心待ちにする多くのリスナーがいた。「付録目当てで雑誌を買っていたが、本誌は読めないのでいつも捨てていた」「洋服の流行が全くわからず、どう着こなしてよいかわからなかった」etc.そんな視覚障がいの女性たちが、「お金を払ってでも利用したいサービス」「服や着ている人のイメージを一言で表してくれる」などと声を揃えるこの企画。皆さんも一度聞いてみて欲しい。音声でファッションを表現するということ、そしてその可能性について、何か感じることがあるに違いない。
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ZOZOテクノロジーズでは、ファッションとテクノロジーに関する事業・研究を行っております。【ZOZOテクノロジーズ】【ZOZO研究所】
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May 01, 2020 at 05:00AM
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