昔々、ロマンティックという言葉は、軽薄さ、女の子っぽさ、そして気まぐれと同義語だった。2020年、私たちは、強く、またはパワフルになるために女らしさを拒否する必要はない。いつもそうであるように、私たちが着るものが、私たちの進化したアティチュードを反映しているのだから。典型的なパワードレスとキャラクター化されてきたような、パワースーツや強調した肩、またはピチピチのボディコンドレスとは程遠い、ロマンティックな服が浮上しつつある。それは、また違った種類の武器となり、より優しげな力を吹き込む。
そうした部類のリーダーは、ピエールパオロ・ピッチョーリ(Pierpaolo Piccioli)
だ。彼の作り出す、優雅で、ボリューム感のある服は、多くのエディターたち(そしてセリーヌ・ディオン)を泣かせるほど感動させてきた。構築的なシルエットは、もっとも美しい生地、そして華麗で喜びに満ちた色で作られていて、女優のフランシス・マクドーマンド(Frances McDormand)、それにレディー・ガガ(Lady Gaga)やリゾ(Lizzo)などのお気に入り。「今日、ロマンティシズムは弱さではありません。それは強さなのです」と、盛大な喝采を浴びるこのデザイナーは、2018年にこう述べた。「断定的であっても、攻撃的とは違います。ロマンティシズムにおけるすべてのヒーロー、ヒロインは、犠牲を払わねばなりませんでした。理性があって、良い人でも、ロマンティストなら犠牲を払わねばなりませんでした。今こそロマンティストであり、それでもなおすべてが絶好調だと言えるときだと思うのです」
もちろん、アレキサンダー・マックイーン(Alexander McQUEEN)もいる。このブランドを率いるサラ・バートン(Sarah Burton)は、優しげな強さをこのブランドのUSP(ユニーク・セリング・ポイント)にしてきた。ドレスであれジャケットであれ、テーラリングは「強さなのです。一方でそれはまた保たれるということでもあります」と彼女は言う。同じくパワードレスの既存のコードは、もはや適用されない。とはいえ、キャットウォークに不規則に登場するテーラリングの人気も見過ごすべきではない。ロマンティックな服の浮上は、女性たちが服装を選ぶ新しい方法を反映している。それは彼女たちが、強く、自信を持てるように。エミリア ウィックステッド(Emilia Wickstead)の洗練された、フェミニンな服は、建築的なツイストがあるし、またセシリー バンセン(Cecilie Bahnsen)の可愛らしいパステルの服は、彫刻的なシェイプと並列する。コム デ ギャルソン(COMME des GARÇONS)が、ロマンティックをドラマティックかつアヴァンギャルドに捉える力に挑戦できるものはほぼいないだろうし、ダークだけど非常に美しい、ファッション業界のお気に入りであるシモーネ ロシャ(Simone Rocha)もしかり。モリー ゴダード(Molly Goddard)のはかなげなチュールドレスは、か弱いというのではなくむしろ破壊的だ。実際のところ、このブランドのもっとも有名な広告塔は、人気ドラマ「キリング・イヴ/Killing Eve」のヒロイン、ヴィラネルだ。連続殺人犯の彼女は、自分にふさわしい服を選んで、典型的な女らしさの観念を破壊する。
「パワーとジェンダー、アイデンティティと政治について、社会で私たちがしている会話は、服とファッションデザインととても近い関係にあります。なぜならクリエイトする、感じる、表現する力は、私たちが言わなければならないこと、私たちが意味すること、そして私たちがどう見えるかに関係があるからです」と、ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションで、MA ファッション・カルチャーズのコースリーダーを務めるロージー・フィンドレイ博士は言う。「どんな種類の服が、人をパワフルに感じさせるかは主観的なもので、自分自身についての感じ方、力についての考え方、それがどのように素材感やシルエット、そして着てみたときの服の感触に変換されるかによって異なるのです」
ロマンティックな服の需要は高まっている。1月に、ドーバー ストリート マーケットは、セシリー バンセンのボリューム感のある、素敵なデザインの服のために捧げたコーナーをオープンしたし、昨年、新ブランドのスリーパー(Sleeper)が発表した、バルーンスリーブでスモックタイプの服は瞬く間に夏のヒット作になった。ハロッズのファッションディレクター、リディア・キングは、ハロッズはロマンティックな雰囲気の服の売り上げが増加しているのに注目しているという。
「ハロッズは、業界全体を通じて、需要が増えるにつれ、ロマンティックなスタイルが進化しているのを目撃しています」と彼女は私たちに語った。「ヴァレンティノ(Valentino)、ミュウミュウ(Miu Miu)、クロエ(Chloé)といった伝統あるファッションブランドにとって、ロマンティックな雰囲気というのはDNAの一部です。そうしたブランドは、自身の非常に美しい装飾や、ラッフルやレース使いによって、ロマンティックなムードをよりクラシックなアプローチで取り入れています。今、私たちは、例えば、トレンドに自身のモダンなツイストを加えているロテート(Rotate)など、よりコンテンポラリーなデザイナーたちのフィルターを通して、ロマンティックなスタイルを見つめ始めています」
セシリー バンセンにとって、エンパワメントのステートメントとしてのロマンティックな服の浮上は、なんの驚きもない。「長らく、アスレジャー、スポーツウェア、マスキュリンなスタイルが人気でした。だから、おそらく多くのデザイナーたちが、それに対抗する反応をしているのでは」と彼女はいう。「私は服に女らしさと美しさを感じます…それは、新しい方法でフェミニニティと美を見つけることなのです」
ロマンティックな服のより現代的なバージョンは、子ども用パーティドレスの大人版に見られることも。それは、子供のように成長した女性を着飾るというプリズムを通して見ると、問題になるかもしれない。とはいえ、フィンドレイ博士が指摘したように、こうした服のボリュームが、違いを生む重大なポイントとなる。「こうした服は、存在感を示します。明るい色、チュール、リボンを使い、そしてそれらを大人の身体に合わせるのです。おそらくこうした素材や色の”軽薄さ”の見方を変えています」と彼女は言う。「つまり、それらは何かを主張するものと読み取れます。フェミニニティのビジョン、世界に存在感を示すということ、それは着る人に力を感じさせるかもしれません」
ボリューム感と存在感を示すという考えはまた、エミリア ウィックステッドのクリエイションにおいても重要な役割を果たしている。このブランドは、メーガン妃やローラ・ダーン、ルピタ・ニョンゴなどに着用されてきた。「私はボリュームを違った理由で使っています」と彼女はいう。「しばしばそれは強さなのです」。彼女は今年のゴールデングローブ賞で、オリヴィア・コールマンが着用するために作ったカスタムメイドの服について言及した。「クールなトレーンが付いた、直線的なラインのドレスで、そこにパワフルなシルエットの大きな袖がコントラストを成していました。だけど、それはまた遊び心とグラマーに対するセンスでもあります。私はもともとノスタルジックで、何か気まぐれなものを着て披露するのが大好きなのです。おしゃれすることで得られる自信と喜びです」
セシリー バンセンは、彼女が使用する生地のボリュームのある性質は、着用する人に身体的なインパクトを持たせると語る。「私はこうした服のひとつを着用すると、歩き方が変わります」と彼女は説明する。「大きくはずむようなスカートをはくと、自分自身にもっと意識が向くようになるのです」
現代的なロマンティシズムに対するファッションのアプローチは変化しているけれど、ひとつの共通項がある。それは、心地良さ。こうした服は、ふんわりと膨らむ。シルエットは異なるけれど、それらはゆったりとしていて、思いきり動けるのだ。これらは身体を彫刻のように象ったり、押し込めたりするような服ではない。毎日の暮らしの中で着られるようデザインされている。しばしばブーツ、ヒールの太いサンダルやスニーカーとコーディネートされ、それがモダンさだけでなく、気楽さも加えてくれる。「気楽に感じられること以上にパワフルなものはありません。そして私はちゃんとおしゃれすることと心地良さは両立できると信じています」とウィクステッドはいう。彼女は自分がデザインするものが心地良いかを確かめるために、すべて試着するのだ。
心地良さは、人気上昇中のブランド、スリーパーによって感情的に反映されている。このブランドは、元ファッションエディターのケイト・ズバリエヴァ(Kate Zubarieva)とエイシア・ヴァレサ(Asya Varetsa)によって、初めにパジャマブランドとして設立された。軽やかな理念や軽量のシルクサテンを使ったロマンティックな生地は、とても贅沢な感じだったので、購入者はそれらを日常着として着始めたのだ。
「私たちがスリーパーを作ったとき、このブランドが、暮らしのもっとも幸せな瞬間のユニフォームになることを目標にしていました」とズバリエヴァはいう。「私たちは女性に自信を感じて欲しいと思いました。そして本当の自信は、心地良さから来ます。私たちの服はパーティにふさわしいだけでなく、授乳や長い散歩、世界を旅するのにも本当に楽ですし、最高の自分になれるのです」
「あなたが何かを着て心地よく、いい気分になれるときはいつでも、自分を強く感じられるのです」とバンセンは加える。「それはビッグショルダーとか、キュッと絞ったウエストではなく、それを着ることで、自分らしく輝ける種類の心地よさがあるということ」
バンセンは良い点を挙げている。結局のところ、着る服が、その人をパワフルに感じさせるというのは様々だ。それは個人の選択であり、個性を表現することが奨励されていない社会において、力を与えてくれるスタイルは、当然厄介な事態だ。力を与えてくれるスタイルとは、パワーショルダーやアンドロジナスなものと言うのは単純すぎるし、ウエストをぎゅっと絞って、体のラインを強調する服だというのも古臭すぎる。今日のパワードレスとは、個性を表すこと。フェザーがしたたるような白のタキシードを着るビリー・ポーター(Billy Porter)になることであり、ターコイズカラーでラッフルがあしらわれたヴァレンティノのケープとヘッドドレスを着用するフランシス・マクドーマンドになることなのだ。
「流行がとてもフェミニンになると、それはパワフルになるのです」と語るのはシュリンプス(Shrimps)の設立者、ハンナ・ウェイランド(Hannah Wayland)。彼女はエアリーなドレスを着るときにもっともパワフルに感じるそうだ。「女性になることであり、少女になることでもあります。私にとって、それがもっともパワフルな服の着方。誰もがそれぞれのパワードレスの型があります。それは自分らしく、最高の自分だと感じさせてくれるパーソナルな服なのです」
ロマンティックな服の高まりが与えてくれるものは、口述のコードに変わるものであり、力を得るためのまた別な服の着方。そしてそれに呼応し、ロマンティックな女らしさは弱さではないと理解するのは、消費者であり、雇用主であり、デザイナーだ。
「私たちは、パワードレスはもはや”服”のことではないと思います」と結論づけるのは、スリーパーのヴァレサ。「真のパワーは、本当のあなた自身を知り、受け入れるところにあります。女性の強さは自己愛と自己表現の自由にあるのです。最高なのは、私たちには、今、この強さを披露する多くの手段があることです。パフスリーブだろうが、肩パッドだろうが関係ないのです」
Translation: Natsuko Kadokura from Harper's BAZAAR UK
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May 06, 2020 at 11:00AM
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